レビュー『世界を変えたテレビゲーム戦争』70~90年代の市場歴史を描く、ゲームビジネス開拓史なドキュメンタリー映画 prime video

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『世界を変えたテレビゲーム戦争』 
70~90年代のAtari・ファミコン・メガドライブなど、懐かしのレトロ時代からのビジネス面も描いた海外ドキュメンタリー映画です。興味深く楽しめましたので、見どころや感想を含めてご紹介します。


Game Changers: Inside the video game wars Review

製作 EFRAN FILMS  2018年公開  約1時間25分  日本語字幕あり


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ビデオゲーム創世期から興隆期を描くドキュメンタリー映画。

1970年代から90年代まで、主にアメリカでのゲーム市場変遷を中心に
ATARI創業者ノーラン・ブッシュネル氏をはじめ、EAやセガアメリカほか、
要人やかつての開発者たちにより沢山の裏話や当時状況が物語られていく。


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序盤 55分間は、ATARI中心に黎明期が丁寧に語られる。

まさにアメリカンドリームなATARIの破天荒さには70年代の世相も垣間見える。
古典ゲーム有名作『PONG』の起源、そしてあの伝説ゲーム『E.T.』、
アタリショックに至った業界経緯や、その後の市場低迷……

権利抗争時の経営判断や、今では疎まれがちだが倫理規制の重要性、
サードパーティーやライセンスの経営影響など色々考えさせられた。


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映画開始 56分… 満を持して8~16ビット時代へ!

日本の任天堂からファミコンが登場し、大きな転換期を迎える。
さらにそれを追う60分…  SEGAによるFC打倒への戦いが始まる!

落ち込んだ米国市場にどう売り込むか? 感心したのも束の間、
セガの挑発的な対任天堂CMはアメリカでも共通だったのかと笑った。
これまた疎まれがちなレーティングの誕生経緯や市場拡大への側面も描かれる。


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そして 77分… ついに32ビット次世代機へ。

描かれるのは主に初代プレイステーション。
ただしSONYと任天堂との有名エピソードや、価格競争まで。
圧倒的な市場席巻を感じさせる辺りで、映画は幕を閉じる。

ゲーム市場が一大産業へ育っていった背景や過程に絞った構成。
扱う内容の偏りや、物足りなさもあるが、意外と熱く楽しめた。



Inside the video game wars 気になった点
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黎明期が55分、8~16ビット時代が20分、32ビット時代は数分。

後につながる重要点とは言え、特にATARIに時間を割き過ぎた印象。
面白かったけれど、社内風土など丁寧すぎて、中だるみにも感じた。
「アタリ・ザ・ムービー」か!と画面にツッコミ入れたくなる。

そこを5分くらい節約、または5分追加してでも
巨頭マイクロソフトの参戦辺りまで描れていれば
ゲームを遊ばない人にも業界拡大をより印象付けられたかもしれない。

その他の点

・米国向けの内容のため、日本のゲーム情勢はほとんど描かれない。
・カバーイメージはXBOXとスーパーファミコンのパッドだが、どちらも登場しない。
・任天堂やセガやソニーの登場人物も多くはアメリカ側の重鎮たち(日本人も一部登場)



Inside the video game wars 感想の最後に
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ゲームビジネス開拓史、ゲーム産業興隆記、そんな大人向けの作風。

『プロジェクトX』や『ガイアの夜明け』のようなビジネス番組的な印象。
アクティビジョン誕生経緯、スティーブジョブズの若い頃ほか、
「へえ!」と感心した小エピソードも色々盛り込まれている。

似た映画『ビデオゲーム THE MOVIE』は広く浅いダイジェストだったが、
こちらは局所的に濃い。ATARIや任天堂vsセガなどに偏ってはいるものの
米国古典ゲーム史のまとめ資料の1つとして役立つ作品に感じた。


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様々な問題を乗り越えて、発展していった考えさせられる部分と
当時の世相や市場状況など、懐かしい気分に浸りながらも刺激的。
観終えた後にはポジティブな可能性を感じられる作品だった。



🍸 JJ VOICE

2010年代以降のゲーム市場もオンライン普及によって
激変しつつあるので、数年後に落ち着いた頃には
2000年以降をまとめた作品も期待したいですね。


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この記事へのコメント

  • ネトフリの「ハイスコア:ゲーム黄金時代」も見よう
    これはこれで食い足りない部分もあるけど
    2021年04月13日 01:31
  • 日本のゲーム企業はどうしてこうなったんですかね・・・
    山内溥元社長は、『大容量ゲームは駄目。ゲームは常に新しい楽しさを開発し、ひたすら完成度を高めていくことが本質である。』と謳ってたんですが、大手はシリーズものしか出さなくなりましたし、他は似たり寄ったりなソシャゲを乱発してばかり
    『売れ筋の製品の販売本数は落ち込むことはない。一番遊びたいと思うソフトは景気が悪くなっても懐が悪くなっても消費者は購入する。』という見立てに絞ったとも考えられますが…
    常に新しい楽しさを開発してるのは海外インディーばかりになっちゃいましたね
    2021年04月13日 06:21
  • You TubeのGaming Historianというチャンネルをたまに見ます。
    マリオ等の有名シリーズの歴史や色々なメーカー・ハードの歴史、岩田社長の生涯などを振り返る番組です。
    英語ですが字幕があるので助かります。
    オッサンになってからドキュメントものを見る時間が多くなりました。
    アマプラでは動物系と世界の車窓からみたいな旅ドキュメントばかり見てます。
    2021年04月13日 13:20
  • JJ

    オススメ番組のご紹介ありがとうございます。
    チェックしてみたいと思います。

    会社は大きくなるほど冒険しづらくなりますから、需要があり安価開発できる無難なゲームが増えるのは仕方ない所かもしれませんね。
    インディは差別化がしないと目立たないため、個性的なゲームが多くて昔を思い出しますね。ただ話題になれるかも分岐点で、マルチ対応やキャラ魅力で驚異的に伸びた作品もあるため、コンテンツ飽和時代の難しさを感じます。
    2021年04月16日 07:03

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