
往年国産ADVが言語処理AIを搭載『ポートピア連続殺人事件』のテックプレビュー版『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』、2023年4月24日よりSteamにて無料配信を開始していますので、レビューも兼ねてご紹介します。
✨ | The Portopia Serial Murder Case |
無料 日本語対応 キーボード入力/音声入力対応 ©1983 ARMOR PROJECT ©1985 SPIKE CHUNSOFT CO., LTD. ©2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. |
往年アドベンチャーに言語処理AIが搭載された技術プレビュー版。
原作は1983年、PC-8801の後ファミコンにも移植された有名ゲーム。
本作は2023年、スクウェア・エニックス AI部による開発となり、
システムはレトロゲームですが、グラフィック含めて刷新。
文章理解や対話を目指す、ディープラーニングによるAI自然言語処理(NLP=Natural Language Processing)の技術デモで、キーボード自由入力や音声で指示する点が特徴です。 ※AI理解力はまだ限定的。
また非倫理的な発言の可能性を避けるため、AI会話生成機能は排除されています。 ※今後の研究により、安心して楽しめる環境が整った際は提供予定との事です。
相棒ヤス(間野 康彦)に指示しながら、殺人事件を調査していく。
「聴き込みしろ」「〇〇を調べるんだ」「〇〇へ行くぞ」「(証拠名)を見せてやれ」など自由入力。少々の語尾の違いは問題なし。
選択肢ボタンなどはないため、何ができるのか?手探りで探すゲーム性。
NLU Visualizer(入力候補リスト)があり、基本それを頼りに指示します。
手がかりや情報を集めながら、捜査範囲を広げていく。
✨ | AI Tech Preview: The Portopia Serial Murder Case |
AI関連の気になった点
・AIの文章理解の許容範囲がとても狭く限定的。
単語はローマ字でも反応しましたが、読み仮名が分からない漢字は入力がネック。
・音声入力の漢字変換が微妙なため、キーボード併用必須。
何度話しかけても「捜査本部」が「操作本部」など誤変換になり、通じなかった事も。
システム周りの気になりそうな点
・画面UIは右Ctrlで消せます。UI英語表記で当初気付きませんでした。
・音声入力は、右ALTキーを押した状態でマイクに話して、キーを離すと入力決定する方式。
✨ | AI Tech Preview: The Portopia Serial Murder Case レビュー |
コマンド入力型・往年アドベンチャーとしては強化版ながら、
対話型AIを期待してしまう現代ではレトロ感あふれるAI体験。
現段階のAIヤスは自然対話にかなり遠い。
文脈を理解せず、誤字をあまり許容せず、
具体的かつ簡潔な指示しか受け付けない。
まるで二昔前くらいのゲームAIに指示する感覚、
口語の違いだけを許容してくれる辺りの反応です。
「〇〇について◇◇して」と多くは具体的指示が必要で
会話の流れで略したり、類義語などは通じない事が多い。
例えば「死因」という単語を使わないと認識しない場面。
「なぜ死んだ?」「どうやって殺された?」では通じない。
「第一発見者は?」「アリバイを証明できる人物は?」など定番セリフも通じない。
現状は「NLU Visualizer」質問候補リストに頼るしかなく、
想定されない内容はやりとりできないため、会話感は薄い。
現段階の印象は、コマンド入力型だった80年代ADVの大幅強化版。
より自由な文章入力に対応して遊びやすくなったのは確かですが、
対話型AIの登場した現代ではどうしても比べてしまうレトロ感。
また何度も入力し直しを求められるため、指が疲れて
「テーブル」など最低限だけで試すようになっていく。
音声入力だと楽ですが、こちらは漢字の変換精度がネック。
「ボクは正しい指示にしか答えませんよ~」とばかりのヤスのジト目がもう(笑)
あまりに会話にならない、珍反応なやりとりのおかしさに
「何でだよ!?」画面越しにツッコミ入れながら何度も苦笑。
「どこまで通じるか?」検証したりの面白さはありました。
以上、ゲームAI技術の「進展に期待したい」想いが増す体験。
何はともあれ無料配信のため気軽に遊べます。
ゲーム自体は十分面白い、往年大ヒット作です。
ちなみにSteamでは同社歴代作を超える低評価。
あの『THE QUIET MAN』やや不評(好評率36%)、『LEFT ALIVE』やや不評(好評率27%)をも凌ぐ、非常に不評(好評率10%前後)から初日スタート。
将来アップデートで遊びやすくなる事も期待。
本作以外にも様々な技術発信を行う予定との事で
AI搭載の次回作があるのか?など今後の展開も注目したいですね。
☕ | JJ VOICE「編集後記のようなもの」 |
いずれRPGなどでNPCと日常会話できる日が来るかもしれませんね。 「やあ、ボク勇者なんだ。キミの家のタンス調べてもいいかな?」 ただ誰もかれもが、同じ知識量だったりメタ発現されると不自然なため、 国や居住地域、性別や年齢や性格、職業や生活環境ほか、沢山の調整が必要。 (ファンタジー、サイバーパンク、中世、未来宇宙など、世界観の統一も) まずは現代NPC 1人など、シンプルなAI会話搭載ゲームが増えていきそうですね。 システム面での新たな地平、ゲームがどう発展していくのか楽しみです。 |
この記事へのコメント
でもいずれゲームエンジンに統合されてバックグラウンドを設定するだけで、ゲーム内で勝手に生活して会話するようなNPCが作れるようになると考えると楽しみですね。
はろー
ポリコレ全盛でAIがちょっと口走ったら提訴沙汰になりかねない昨今では技術の一般開放ってハードル高そうです
もう10年早く世に出てきてたら凄い進化速度だったろうなと思うと残念でなりません
JJ
もしAIヤスの会話生成機能が実装されていれば、何を言っても返答があり印象が全然違ったかもしれませんね。(倫理問題を除けば)カオスで楽しい会話相手になったかも(笑)
ゲームエンジンへ統合されれば、一気に搭載ゲームが増えていきそうですね。
はろー さん
もう10年早くは私も思いました。
話が通じにくいのはゲーム的AIで普通くらいの認識で、非常に好評~ほぼ好評の評価を得ていたと思います。
個人インディなら挑戦できても、大手メーカーのため問題配慮が大変そうですよね。
その辺が不評なんじゃないかなと。
JJ
ひらがなでの誤判定や漢字の音声誤変換を許容してくれるようになれば、もう少し遊びやすくなるのですが。